「COMEX」の逸話。現行モデルと一線を画する幻の時計が秘める魅力とは?
ただでさえ希少価値の高いロレックスのヴィンテージだが、なかでも幻の逸品と呼ばれる「レアロレックス」が存在する。その一つが、1960年代後半に作られた「ロレックス COMEX」だ。一般に市販されなかったリファレンスナンバーが存在したり、同じヴィンテージでも通常モデルとは異なるディテールを備えている。今回は、そんなレアモデル「ロレックス COMEX」の逸話や魅力を時系列順にまとめて紹介!
もう二度と生産されない超レア時計「ロレックス COMEX」の歴史は、コメックス社のダイバーが“サブマリーナ(Ref.5513)”を着用していたことから始まった!
「ロレックス COMEX」とは、1961年にアンリ・ジェルマン・デァウゼ(Henri Germain Delauze)氏によって設立された潜水作業専門会社コメックス(COMEX)の協力によって誕生したサブマリーナとシードゥエラーを指す。コメックス社のダイバーにのみ提供されていたこと、そしてコメックス社が1997年に倒産して生産が終了したことから、現在はごく一部の限られたヴィンテージウォッチ販売店でしかお目にかかれない幻の時計として知られている。コメックス社のダイバーたちは潜水作業をするにあたり、当時ダイバーズウォッチの元祖として圧倒的な防水性能を有していたサブマリーナ(Ref.5513)を着用していたという。
1964年、作業時にダイバーが装備していたサブマリーナの風防が吹き飛ぶ事故が起きた。原因は飽和潜水での加圧・減圧工程の際、腕時計内に「ヘリウムガス」が侵入したことで、減圧時にヘリウムガスが膨張し風防を吹き飛ばしたのだ。コメックス社からの報告を受けたロレックスは、飽和潜水にも耐えられる腕時計の開発に着手。そして1967~68年頃、世界で初めて「ヘリウムガス・エスケープ・バルブ」を搭載させたサブマリーナ(Ref.5514)を開発した。
新開発された“サブマリーナ(Ref.5514)”はコメックス社のためだけに提供された幻のロレックス!現行モデルと一線を画する3つの魅力に注目
上記の通り、作業時にダイバーが装備していたサブマリーナの風防が吹き飛ぶ事故が起きたことから1967~68年頃に新開発された“サブマリーナ(Ref.5514)”。コメックス サブマリーナのなかでも「Ref.5514」というリファレンスナンバーは、ロレックスがコメックス社のためだけに発行した異例のものだ。コメックス社のダイバー専用に支給されており、一般販売されなかったことから幻のモデルとされている。もちろん現行での生産は無く、名だたるヴィンテージウォッチ販売店でもほとんど取扱いがないほど流通量が少ないヴィンテージロレックスのひとつだ。そんな“サブマリーナ(Ref.5514)”で注目すべきポイントを3つ紹介!
コメックス サブマリーナの注目ポイント①「現行サブにはないヘリウムガス・エスケープ・バルブ」
コメックス社ダイバーのみに支給されていた「Ref.5514」は、Ref.5513(1964年に風防破損事故を起こしたモデル)をベースとしながら、9時位置にヘリウムガス・エスケープ・バルブを備えているのが代表的な特徴の一つだ。Ref.5514以外のサブマリーナはヘリウムガス・エスケープ・バルブを備えていない。
コメックス サブマリーナの注目ポイント②「思わず目を引くCOMEXロゴ併記のフェイスデザイン」
コメックスが創業した1961年から廃業に至る1997年までのあいだ、「ロレックス COMEX」はごく少数のみ生産されてきたが、実はそのすべての文字盤に「COMEX」の文字がプリントされているわけではない。そんな事情もあり、COMEXロゴが併記されているものはよりプレミア度が高いというわけ。文字盤上の「COMEX」は意外なほど存在感があり、コメックス社による特別オーダーの証としてさりげなく鎮座しているのがたまらない。ロレックスファンはもちろん、ヴィンテージウォッチに知見のある業界人からの視線も独占するだろう。ちなみにRef.5514に限っては、すべての個体に必ずCOMEXの記載がある。
フチなしインデックスのアンティークモデルはより希少価値高し!
インデックスが縁取られておらず一回り大きいマキシダイヤル、いわゆる「フチなし」仕様もファン垂涎のディテールだ。このフチなしインデックスは、年式が古い個体の証。Ref.5513では前期ダイヤルがフチなし、1985年頃から流通するようになった後期ダイヤルではフチありといったように、同じリファレンスナンバーでも個体によって違いがある。もちろんフチありも価値は高いが、よりマニアの心をくすぐるのはフチなしの個体だ。こちらのモデルのように、綺麗なクリーム色に変色しているものはより希少価値が高い。
コメックス サブマリーナの注目ポイント③「裏蓋にもダブルネームの証を刻印」
裏蓋には「ROLEX」の文字と「クラウンロゴ」に加え、「COMEX」の文字と「支給ナンバー」が刻印されている。こうした着用時には目につかない部分の特別仕様も、レアロレックスたる所以だ。
シードゥエラーの起源もコメックスにあり!1967年に誕生した「コメックス シードゥエラー」も見逃せない
サブマリーナ(Ref.5514)をベースに開発したとされるのが、1967年誕生の初代シードゥエラー(Ref.1665)だ。プロユースのダイバーズモデルとして本格的な性能を誇るシードゥエラー。現在でもロレックスのラインナップに名を連ねるこのシリーズは、コメックス社の協力なくしては誕生しなかっただろう。サブマリーナ同様、コメックスモデルは現在1千万円オーバーで取引されるほど希少な存在。取り扱いがあるショップもごく僅かだ。
第一世代“ロレックス シードゥエラー(Ref.1665)”はドーム型風防や小ぶりなデイト表示に注目
1967年に誕生した第一世代“シードゥエラー(Ref.1665)“。当時のサブマリーナの倍以上である610mの防水性を誇り、随所にロレックスの実力がうかがえる。水圧の力が分散されるよう計算されたドーム型風防も初代シードゥエラーならではのディテールだ。サイクロップレンズのない小ぶりなデイトカレンダーもアンティーク感を堪能できる。
裏蓋にはガス・エスケープ・バルブ搭載であることを刻印。「ロレックス サブマリーナ」に比べて、より厚みがあるのも特徴の一つだ。
最も現行に近い“ロレックス シードゥエラー(Ref.16600)”のダブルネームモデルは他の個体より生産数が少ないレアモデル
1991年に登場したシードゥエラーの第三世代目にあたるシードゥエラー“Ref.16600”のダブルネームもプレミア度が高い。コメックス社が倒産した1997年までの約6年間で支給された数は100本とも200本とも言われており、その希少性から世界中のロレックスマニアを虜にしている。裏蓋にはダイバーへの支給ナンバーを刻印。当時最高のムーブメントとして評価されたCal.3135を搭載している。
フチありインデックスやフラットな風防などは現行モデルに通ずるディテールだが、文字盤の「COMEX」表記などちょっとした違いが所有欲を満たす。
「ロレックス COMEX」は公式スポンサーとしてダイバー用に支給していた&コメックス社の倒産で生産終了したことによって超レア時計に!
ロレックスは1972年にコメックス社の公式スポンサーに就任。ダイバーたちにはサブマリーナやシードゥエラーが支給されていた。しかし、その後コメックス社は1997年に倒産。一般市場には出回らない、そして今後生産されることがないという背景が相まって、現在は非常に希少価値の高い幻の時計として取引されている。