栄光のデイトナ伝説を追う #Daytona

栄光のデイトナ伝説を追う
#Daytona

2014年にゼニス社のCEOからROLEX社のCEOへと籍を移した【ジャン=フレデリック・デュフール氏】公式ウェブ等で自社の歴史についても積極的にアピールするようになったロレックスだが、また違った思惑も見える

 

クロノグラフ後発の『ロレックス』そのマーケティング戦略とは?

1930年頃、ROLEXはクロノグラフ時計の製造を開始する。当時のROLEXにはクロノグラフ・ムーブメントを自社で開発するメリットもなく(技術力もなかったと言われている)バルジュー社製ムーブメ ントを使用し、1933年に初めてカウンター付きクロノグラフの開発に成功した。この初となるクロノグラフ時計には、タキメーター目盛り(速度計測)、テレメーター目盛り(距離測定)、パルスメーター(脈拍測定)を備えており、1939年に日常生活防水モデルとして、オイスターケースを採用した初めてのクロノ グラフを発表した。ただ、他社製品とスタイル的な差もなく、ヒット作とはならなかったのは有名な話である。

先駆者となっていたのは、今でも各ブランドの顔といえる、OMEGAのスピードマスターやBREITLINGのナビタイマー。ROLEXはエクスプローラーやサブマリーナなど、スポーツモデルが華々しいデビューを飾りながらも、ことクロノグラフに関してはなかなか思ったような売れ行きとはならず、販売戦略も行き詰まっていた。

1959年米国フロリダ州のデイトナビーチに『デイトナ・インターナショナル・スピードウェイ』が完成する。当時、ROLEXの時計販売数の多くを占めていた米国市場。また、欧州を本場とするカーレース市場に対して、一矢報いたいサーキット運営会社。その両者の想いが重なり、世界中のカーレースファンが熱狂する24時間耐久レースを舞台にROLEXは勝負を仕掛けることとなる。

タキメーター表示はベゼルに移動し、インダイヤルに視認性の高い反転カラーを採用。ROLEXはこの新しいクロノグラフを「カーレース用」と位置づけるべく「レーシング仕様」へとデザインを変化させる。これが今日の現行デイトナにも継承されているデザインの始まりである。

 

伝説のドライバーたちが愛したレーシング・クロノ

人類で初めて時速300マイル(482km)を越えた人物=『マルコム・キャンベル郷(英*以下マルコム氏)』1924年からの10年間で最速スピード記録を9回も更新した。そのうち、デイトナビーチでの記録更新は5回。当時マルコム氏は、ROLEXのオイスターを身に着けていた。また『ジャッキー・スチュアート』という名をご存知であろうか。3度のF1王座に輝き、過去50年間で最も有名なレーサーの一人とも言われ、モータースポーツ業界では知らない人はいない人物。その経歴は高く評価され、2012年に”50周年”を迎えたデイトナ24時間耐久レースでは、グランドマーシャルを務めている。そして、いまではROLEXファン垂涎の人気モデル” ポールニューマン ”の愛称の起源となった俳優の『ポール・ニューマン』彼がデイトナの”エキゾチックダイヤル(Ref.6239)”を愛用し、そのモデルが2017年10月に開催されたPHILLIPSの「ウィニング アイコンズ」というオークションで、日本円にして約17億円で落札されたのは記憶に新しい。実際に彼はデイトナ24時間耐久レースに幾度となく出場し、1977年には5位入賞も果たしている。

 

コスモグラフ・デイトナという名についての一考察

「This is the new ROLEX Chronograph,It’s called Le Mans.」1964年ROLEXはRef.6239の広告でこのように表現をしている。「ル・マン」。当時の「daytona」表記の無いモデルがこのように呼ばれているのはここに由来する。現在、デイトナの正式名称は『コスモグラフ・デイトナ』と呼ばれる。ではこの『コスモグラフ・デイトナ』はどこからきたのだろうか。

 

コスモグラフ・・・

コスモグラフといえば、当初は1950年代に製造されたトリプルカレンダー・ムーンフェイズ、Ref.6062に名称が与えられ、商標登録も行われている。1963年。このデイトナが誕生した年は米国航空宇宙局*NASAが公式クロノグラフ採用のテストをしており【コスモ=宇宙】表すことからもROLEXがその座を目指したとの推測は多数、説が挙がっている。結局のところ、この座はOMEGAのスピードマスターに奪われてしまう。

 

デイトナ・・・

「このロレックスの新しいクロノグラフが発表されて間もない頃(注:1965年)、ダイヤルに”DAYTONA”の文字が追加されたモデルがあった。当初はアメリカ市場向けの時計のみに入れられていたこの文字は公式時計であるフロリダのデイトナ・インターナショナル・スピードウェイとロレックスの関係を示し、このモデルとモーターレース界との密接な関係を構築するために、ロレックスのアメリカ支社の依頼によって加えられたとみられる・・・(後略)」

オフィシャルな広告には上記のように記載がある。

 

 

SIR MALCOLM CAMPBELL

マルコム・キャンベル(1885-1948)。地上速度の世界記録を9回塗り替え、水上での速度世界記録も4回達成した”スピードの王者”。その功績を称えられ、ナイトの称号を授与された。

 

SIR JACKIE STEWART

ジャッキー・スチュアート(1939-)。F1GPに出場した99回のうち27回優勝し、表彰台には43回立った。1969年、1971年、1973年と、3回のF1年間チャンピオンに輝く。