投資観点でも美味しい!?“ エル・プリメロ”搭載のデイトナとは?

投資観点でも美味しい!?“ エル・プリメロ”搭載のデイトナとは?

名作揃いのロレックスのなかで、随一の人気を誇るコスモグラフ デイトナ。そんなデイトナのなかでも、エルプリメロを搭載した「デイトナ Ref.16520」は、イマ狙い目のヴィンテージロレックスとしてマニアからも注目を集めている。当時のロレックスで唯一他社ムーブメントを搭載していたなど、さまざまな理由から人気が衰えることを知らない。今回はエルプリメロモデルのデイトナ Ref.16520にフォーカスし、その魅力を紹介!

ロレックス史上最後の他社ムーブメントモデル!「エルプリメロ」を採用したデイトナ Ref.16520「エルプリメロ」とは?

【ゼニス社が開発した世界初の自動巻きクロノグラフムーブメント】

デイトナ Ref.16520に搭載されている「エルプリメロ」とは、時計メーカーのゼニス社(ZENITH)が開発したムーブメントのこと。1865年に創業したゼニス社は、時計界で初となるマニュファクチュール工場を建て、懐中時計の時代から高精度な製品を手がけ
ていた。エルプリメロが発表されたのは1969年1月。当時クロノグラフのムーブメントは手動のものしかなく、世界で初めての自動巻きクロノグラフムーブメントとして発表された。しかし「世界初」であることがこのムーブメントの評価理由ではない。毎時36,000振動というハイビート、そして50時間以上のパワーリザーブという革新的なスペックこそエルプリメロが伝説的なムーブメントと称される理由だ。

現在の多くの時計は28,800振動、1秒間にテンプが8回振動するのが基準。36,000振動、1秒間にテンプが10振動というエルプリメロの数値は、それだけ安定した精度を出しやすいということを意味している。また、振動数が高いと部品摩耗やオイル切れなどの問題が懸念されるが、エルプリメロの場合は独自開発の潤滑油によって耐久面でも抜かりがない。半世紀も前に開発されたにもかかわらず、現代でも最高峰といえるスペックを誇る。

一歩間違えればエルプリメロ搭載のデイトナは存在しなかった!?知っておきたい逸

スペックの高さもさることながら、エルプリメロを語るうえで欠かせない「逸話」もファンの心を惹きつける。1969年、時計界を大きく揺るがした最大のニュースはエルプリメロではなく、セイコーが開発したクォーツ時計だった。世にいう「クォーツショック」は機械式時計の価値を失墜させ、1970年代に多くの時計メーカーが廃業することに。ゼニス社も例外ではなく、1975年には機械式時計の生産を終了し、製造をクォーツウォッチのみにするという方針転換を余儀なくされる。

これにより大量の設計図や道具の売却、破棄がゼニス社の上層部から命じられたが、技術者のシャルル・ベルモ氏がこれに反対。150にも及ぶ金型、図面、カム、切削工具を靴箱にしまい工房の屋根裏へと隠した。それから9年の時を経て機械式時計が
復権し、屋根裏に隠された図面や道具が再び日の目を浴びることになる。シャルル・ベルモ氏の先見の明と機転がなければエルプリメロは二度と製造されることはなく、ひいては1988年にデイトナ Ref.16520が生まれることもなかったのだ。

「デイトナ Ref.16520」にはロレックスが独自にデチューンしたエルプリメロを搭載!

ロレックスといえば「オイスターケース(防水時計)」「パーペチュアル(自動巻き機構)」「デイトジャスト(日付窓)」といった、さまざまな世界初の発明を生み出してきた時計メーカー。間違いなく世界屈指の技術力を誇ると言えるが、そのロレックスですら当時は自動巻きクロノグラフムーブメントの実用化には至らなかった。完璧な品質を求めるロレックスだからこそ、1988年の時点ではデイトナのムーブメントに自社製ではなく他社製のエルプリメロを選んだのだ。デイトナに積まれているCal.4030は、エルプリメロをベースにロレックスが独自の調整をしたもの。あえて振動数を毎時28,800に抑えることで耐久性を重視しているあたりは、さすがロレックスといったところだ。2000年にはデイトナのムーブメントも自社製となり、搭載する全てのムーブメントを自社生産に。その約13年もの間、ロレックスが採用し続けていたこともエルプリメロの完成度の高さを物語っている。

カジュアルはもちろん、スーツスタイルにもフィットするのが「デイトナ Ref.16520」の凄さ

「デイトナ Ref.16520」は、スポーツモデルであるためカジュアルスタイルに合うことは言うまでもないが、黒とシルバーの色合いはスーツスタイルにもうまく溶け込む。現行と比べてインダイヤルは光沢を抑えた落ち着いた色味を採用しており、インデックスや時分針は華奢な印象。よって文字盤もスマートな見た目に仕上がっており、腕元でイタズラに主張することがない。現行には見られないダイヤル焼けによるブラウンアイも見逃せないポイント。クリーム色からキレイなブラウンに経年変化しているモデルは、より希少価値が高い個体として取引されている。ブラウンアイとリンクさせるように、茶系のセットアップでまとめるのも粋なスタイリングだ。

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「デイトナ Ref.16520」はイマが狙い目!?時計マニアが注目を集めている理由とは?

ヴィンテージロレックスと言えば、当時の定価より数倍の値段がつくことも珍しくない。たとえば同じデイトナでも、手巻き式デイトナとしての最終型番であるRef.6263やRef.6265は1千万円前後の価格帯。ロレックスとコメックスによるダブルネームのサブマリーナ、Ref.5514も軽く1千万円を超える。そんななか、エルプリメロ搭載のデイトナRef.16520は300万円前後の価格帯で、魅力的なモデルでありながら高騰しすぎていない。手巻きデイトナのように10年後、20年後に資産価値が高まっていく可能性もあるなか、現時点で手を出しやすいヴィンテージロレックスだと言えるだろう。

Ref.16520は「製造本数の少なさ」「他社ムーブメントを採用した(おそらく)最後のモデル」「マニア受けする逸話や背景」など、語る要素が豊富にありながらも、まだ相場が1千万円クラスに上がりきっていない個体があるのが不思議なところ。マニアの間では、今後ほぼ確実に相場が上がる個体と噂されているため、予算に余裕のある方は資産運用の一環として購入を検討してみるのも十分アリだ。

個体によっても違いアリ!エルプリメロを搭載した「デイトナ Ref.16520」で注目すべきディテールはこの3つ

エルプリメロ搭載の「デイトナ Ref.16520」は、短い製造期間ながら何度も仕様変更されたモデルとしても有名だ。初代〜7代目それぞれに違いがあるため、ひとつずつ挙げていくとキリが無い。文字盤だけでも6回も仕様変更されている。次の項では、なかでも注目したいディテールを3つ厳選して紹介!

デイトナ エルプリメロ(Ref.16520)の注目ディテール①「前半世代にみられる12時間積算計の“逆6ダイヤル”」

同じリファレンスナンバーでも、ちょっとした違いで価値が変動するのがロレックスの奥深いところ。Ref.16520の場合は「逆6」ダイヤルがそれにあたる。逆6ダイヤルとは、6時位置にある12時間積算計の6と表記すべき箇所が、中心を基準に表記されているため9となっているものを指す。逆6ダイヤルを採用しているのは、デイトナRef.16520の「MK4」までの世代だ。その後の世代はデザイン性よりも視認性を重視して「正6」ダイヤルに変更されたと言われている。Ref.16520のなかでも古い個体を探す場合、このディテールのチェックは外せない。

 

デイトナ エルプリメロ(Ref.16520)の注目ディテール②「わかる人なら一目で世代がわかるクラウンロゴの下に坐す“複数列の文字プリント”」

12時位置のクラウンロゴの下にある複数列の文字プリントも注目すべきディテールのひとつ。「段落ち」「4列」「ヒゲの装飾」など、世代によってそれぞれの特徴が存在する。「逆6」「正6」の違いからさらに細かく世代を判別するなら、このディテールをチェックするのがオススメだ。ちなみに「正6」が採用されたMK5とMK6は製造年は違うが仕様はほとんど同じ。しかし、文字列だけは若干の違いがある。それはクラウンロゴとの距離。MK6では、MK5よりもクラウンロゴと文字位置の間を詰めてプリントしている。

(上)デイトナ エルプリメロ(Ref.16520) MK6
(下)デイトナ エルプリメロ(Ref.16520) MK5

デイトナ エルプリメロ(Ref.16520)の注目ディテール③「タキメーターが200までしかないものは初期モデルの証」

デイトナ Ref.16520には、タキメーターが200までしか表記されていないものがある。これは初期モデルであることの証で、マニア心をくすぐるディテールのひとつだ。逆6ダイヤルのモデルでも製造時期によってタキメーターの数値は異なり、200までしか表記されていない個体はよりレアリティが高いと言えるだろう。

 

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